コラム
2023年05月11日

無線LAN技術:規格の概要と問題点

無線LANについて意外と知らない方多いので簡単なコラムにしておきます。ご存じの方には退屈な内容になっています。

無線LANは、一般的に家庭やオフィス内でWi-Fi(ワイファイ)と呼ばれることが多いです。ただし、Wi-Fiとは無線LANの中でも統一した規格を使用している技術や製品をさしますので、Wi-Fiとは無線LANの通信方式の1つと考えてもらえれば良いでしょう。

無線LANとは、「Wireless Local Area Network」の略で、コンピューターやスマートフォンなどのデジタルデバイスが無線でインターネットに接続するための技術です。無線LANの特徴は、ケーブルを必要とせず、自由な移動が可能であることです。

 

日本の無線LANは大きく分けて以下のような種類があります。

IEEE 802.11規格

これは、世界中で最も広く使われている無線LANの規格で、「802.11a」「802.11b」「802.11g」「802.11n」「802.11ac」「802.11ax」がよく使われています。これらは、無線通信の速度や距離、周波数帯などを規定しています。これがいわゆるWi-Fiの規格になります。

  • 802.11a:54Mbpsの通信速度。5GHz帯を使用。
  • 802.11b:11Mbpsの通信速度。2.4GHz帯を使用。
  • 802.11g:54Mbpsの通信速度。2.4GHz帯を使用。
  • 802.11n:最大600Mbpsの通信速度。2.4GHz帯と5GHz帯の両方を使用。
  • 802.11ac:最大6.93Gbpsの通信速度。5GHz帯を使用。
  • 802.11ax(Wi-Fi 6):最大10Gbpsの通信速度。2.4GHz帯と5GHz帯の両方を使用。

2020年以降、802.11n,802.11acあたりが主流となり、現在もまだ一番普及している規格になります。

 

Wi-Fi Direct

Wi-Fi Directは、無線LANルーターを介さずに、デバイス同士が直接無線で通信する技術です。これにより、写真や動画、音楽などのデータを高速で転送することができます。

 

Wi-Fi Protected Setup (WPS)

WPSは、無線LANのセキュリティ設定を簡単に行うための機能です。PINコード入力やボタンを押すだけで、安全な無線LAN接続を構築できます。

 

 

無線LANは非常に便利な技術ですが、一方で以下のような問題点も存在します。

 

セキュリティ問題

無線LANの最大の問題点はセキュリティです。無線通信は物理的な接続が必要ないため、誰でもアクセスしようと試みることが可能です。もしネットワークが適切に保護されていなければ、不正アクセスを受ける可能性があります。また、公共のWi-Fiネットワークを使用する際にも、他のユーザーによる通信の傍受やデータの盗み見などのリスクが存在します。

干渉

無線LANは特定の周波数帯(2.4GHzや5GHz)を使用しますが、これらの周波数帯は他の無線デバイス(例えばマイクロ波オーブンやBluetoothデバイスなど)と共有されています。そのため、他のデバイスの使用によって無線LANの通信が干渉を受けることがあります。これは通信速度の低下や接続の不安定さを引き起こす可能性があります。

通信範囲と接続の安定性

無線LANの通信範囲は、アクセスポイントからの距離や物理的な障害物によって制限されます。また、多数のデバイスが同時に接続すると、ネットワークの帯域が飽和し、接続速度が低下したり、一時的に接続できなくなることもあります。

バッテリー消費

無線LANを使用するデバイスは、有線接続に比べてバッテリーをより多く消費します。これは、特にモバイルデバイスにとって問題となり得ます。

 

これらの問題を理解し、適切な対策を講じることで、無線LANをより安全かつ効率的に利用することが可能です。セキュリティ対策としては、Wi-Fi Protected Access 2 (WPA2) やWi-Fi Protected Access 3 (WPA3)といった強固な暗号化技術の利用、SSIDの非表示設定、無線LANルーターのファームウェアの定期的な更新などがあります。また、干渉や通信範囲の問題に対しては、適切なチャネルの選択、アクセスポイントの配置の最適化、あるいはWi-FiエクステンダーやメッシュWi-Fiシステムの使用などが考えられます。

メッシュWi-Fiシステムは、複数のルーターが連携して一つの大きなネットワークを形成し、接続範囲を広げるものです。これにより、大きな家や複数階建ての建物でも、安定した無線接続を提供することが可能です。各ルーターは他のルーターと通信し、デバイスがネットワーク内で移動すると最も信号が強いルーターに自動的に接続を切り替えます。これにより、通信の途切れることなく、高速なインターネット接続を保つことができます。

バッテリー消費の問題については、Wi-Fiの使用を最小限に抑えるための設定や、よりエネルギー効率の良い新しい規格の使用が有効です。特に、新しい規格であるWi-Fi 6(802.11ax)は、デバイスの省電力機能をより効果的に活用することが可能で、これによりバッテリー寿命の延長が期待できます。

 

日本の無線LAN技術は、その便利さとともに様々な課題を抱えていますが、これらの課題を解決するための技術や手法も日々進化しています。無線LANの問題点を理解し、適切な対策を講じることで、より安全で効率的な無線LAN環境を実現することが可能となります。これからも、無線LANの技術開発と利用の最適化は、私たちの生活を豊かにする重要となるでしょう。