コラム
2023年12月14日

静電耐圧試験:製品の信頼性を高める鍵

PC周辺機器を新規に取り扱ったメーカー様から、以前設計した製品が壊れやすいという相談を受けました。調査の結果、静電気に対する耐性が低いことが原因であることが判明しました。特に、USBLANの挿抜時に製品が故障していたようです。メーカーによると、この種の試験は実施しておらず、必要な試験方法に関するノウハウも不足していたとのこと。そこで、我々がサポートして測定サイトを借り、静電耐圧試験を実施することになりました。

 

静電耐圧試験は、静電気による急激な放電(ESD: Electrostatic Discharge)に対して、電子機器や部品がどれだけ耐えられるかを測定するものです。静電気は、人体や非導電体の表面で発生し、電子機器に放電すると微細な回路を破壊するリスクがあります。この試験は製品の信頼性を保証する上で非常に重要です。

 

静電耐圧試験の国際規格:IEC 61000-4-2

静電耐圧試験にはIEC 61000-4-2という国際規格が用いられます。この規格は、機器が特定のレベルのESDに耐えられる能力を評価するための基準を提供します。一般的に民生機器では4kVの耐圧があれば問題ないとされ、産業機器では8kV、特定の製品では15kVまでの耐圧が要求されることもあります。

 

試験方法

IEC 61000-4-2に基づく試験では、主に空気放電と接触放電の2つの方法が用いられます。

空気放電は試験機器から数センチメートル離れた位置から放電を行い、接触放電は試験機器に直接触れて放電を行います。詳しい方法は測定サイトのホームページなどをご覧いただければ確認出来ますが、拳銃のようなもので「バチッ」と静電気を流すような方法です。

これらの試験は、製品が日常的に遭遇する静電気を模擬しており、それに対する耐性を確認するために行われます。

 

静電耐圧の重要性

電子機器が静電気により損傷を受けると、製品の故障や性能低下に直結します。精密な部品や高度な技術を使用する機器では、静電耐圧の確保が製品の品質と信頼性を維持する上で不可欠です。IEC 61000-4-2に準拠した試験により、市場投入前にリスクを最小限に抑えることが可能です。

  

 

静電耐圧は電子機器が静電気のリスクに対して示す耐性の指標です。IEC 61000-4-2に基づく試験は、製品の信頼性と安全性を保証し、消費者に高品質な電子機器を提供するための重要なステップです。この試験により、静電気による障害から製品を守り、長期的な信頼性を確保することができます。