コラム
2023年10月13日

民生機器開発の難しさ

前回、民生機器と産業機器がどのようなものか、比較する形で記事を書きました。今回は民生機器のみ深堀りしたいと思います。民生機器の開発には特有の難しさや課題が多く存在します。以下に、産業機器と比べた民生機器開発の難しさをいくつか挙げてみます。

 

多様なユーザーの要求の考慮:

一般消費者は非常に多様な背景やニーズを持っているため、幅広いユーザーの要求や好みを満たす製品を設計することが必要です。技術面では、最新に近いトレンドの技術を取り入れることも重要だと考えますが、それらは一般消費者がわかりやすい表現である必要があります。

 

安全性の確保:

家庭での使用を前提とした製品であるため、安全性の要求は非常に高いです。製品の故障や不具合が原因で事故や火災が発生することは許されないため、要求される認証試験も厳しいものになります。故障については、ものによっては12年での故障は許される(本来はダメですが)とは思いますが、故障時に怪我につながらない,火災の危険がないなど、安全面を優先的に考慮する必要があります。そのため、品質の評価も安全性の面を重点的に試験する必要があるでしょう。

 

価格競争:

民生機器市場は多くの競合他社との価格競争が非常に激しいです。高品質でありながら、低コストで製造・販売する必要があるため、大量生産される場合が多く、生産技術面での工夫も重要になります。

 

技術の急速な進化:

電子機器やIT関連の製品など、技術が急速に進化する分野では、製品のライフサイクルが短くなり、常に最新の技術を取り入れる必要があります。前記しましたが、最新の技術でも、ユーザーがわかりやすい表現をすることが重要です。例えば、パケット・AIなど、馴染みの無い言葉でもトレンドとなると一般消費者はそれが何かを認知します。難しい技術も馴染みのある表現を使うことで、消費者はそれらが何かを理解します。

 

デザインと機能のバランス:

機能性だけでなく、見た目やデザインも消費者の購買意欲を引き付ける要因となる。これらのバランスを取るのは容易でありません。ものによっては海外製品のデザイン性には目を見張るものがあります。日本製はどちらかと言うとシンプルなデザインが多く、機能的に優れている場合が多いと感じます。国内販売か海外展開するかも考慮してデザインと機能のバランスをはかり、対応することが必要になります。

 

環境問題との対応:

廃棄時のリサイクルや、エコフレンドリーな材料の使用など、環境問題への対応も求められるようになってきてました。ヨーロッパ諸国が先陣を切って来た環境問題への取り組みですが、近年はアジア諸国でも広く問題視されるようになってきました。また、ISO(国際標準化機構)でも、環境問題にどのような取り組みをしているかを問われることがあり、どのように環境問題に取り組んでいるかを明確にした製品であることが望ましいでしょう。

 

グローバル市場への適応:

世界中で販売される製品の場合、各国の規格や法規制、さらには文化や習慣に合わせた設計やマーケティングが必要となっています。前記でのべたデザインもその一つですが、機能面でも販売先のトレンドや習慣に合わせることが必要になっています。

 

品質の維持:

ユーザーの信頼を得るためには、高い品質の維持が不可欠になります。だからと言って過剰な品質確保のために、価格があがってしまっては元も子もありません。民生品では、ある程度高い品質のものをバラつきなく製造出来ることが重要だと考えています。品質にばらつきがあると、悪い品質がデフォルトとして市場では認識されてしまいます。

  

 

民生機器開発ではこれらの難しさがあります。成功するためには、製品の企画から販売、アフターサービスまでの一連のプロセスをしっかりと管理し、ユーザーの声や市場トレンドを常に取り入れながら開発を進める必要があるでしょう。また、悪い噂・レビューなどがついて製品価値が下がることが無いよう、安全面の考慮、品質のバラつきにも十分配慮した製品であるべきです。