コラム
2023年05月31日

IoT機器を例にした開発の手順: アイデアから製品化までのプロセス

自社で製品を開発して販売したい場合の簡単な流れのお話をしたいと思います。電子・機械・ソフトウェアの要素が絡み工程も多いIoT機器や電子機器を例に記載していきます。手順としては、アイデアの構想から始まり、設計、プロトタイプの製作、試験、改善、そして最終的な製品の製造までの一連の工程が必要となります。今回は簡単な工程の説明になりますので、それぞれの細かい内容については後日またコラムにしたいと考えています。

  • アイデアの創出

最初に、プロジェクトは一つのアイデアから始まります。この段階では、製品が解決しようとしている問題、それがどのように機能するのか、それがどのような利点を持つのかについて具体的に考えることが重要です。

  • 市場調査

製品が商業的に成功するためには、市場調査が不可欠です。競合他社の製品、潜在的な顧客のニーズ、製品の価格設定など、さまざまな要素を詳細に調査します。他社製品で類似品などがある場合は、どのように差別化して行くのか、どのように利点を出していくのかが重要になります。

  • 目標となる製品仕様の作成

アイデアと市場調査の結果から、目標となる製品の仕様を作成します。これから開発するものなので簡単な内容で良いのですが、これから作るものがどのようなものかかが社内で共有出来る、チームで共有出来る内容にしておいた方が良いと思います。この段階でターゲットのコストもある程度出しておいた方がより良いでしょう。

  • 試作品のハードウェアとソフトウェア設計

製品のハードウェアとソフトウェアの設計を行います。この段階では、製品の形状、サイズ、素材、内部の電子機器の配置などをある程度決めていきます。同時に、製品がどのように動作するのかを制御するソフトウェアの設計も行います。IoT機器ではマイコンを使用することが多いですが、マイコンには評価ボードが準備されていることが多いです。マイコン評価ボードに必要な周辺デバイス(センサーなど)を取り付け、試作前の試作、と言う形で動作検証を行えるとプロトタイプ製作の精度があがります。

● プロトタイプの製作

設計が終わりプロトタイプを製作します。これは、設計が想定通りに動作するかを確認するためのものです。筐体が必要な場合は、3DプリンターやCNCマシンなどを使ってハードウェアを製作します。電子回路は回路設計から基板を製造し、筐体に組み込みます。マイコンが搭載されている場合はソフトウェアを書き込み、プロトタイプを製作します。

  • テストと改善

プロトタイプが製作されたら、実際にテストを行い、改善を行います。ユーザビリティテスト、パフォーマンステスト、セキュリティテストなど、さまざまなテストを行い、問題点を洗い出します。その結果を元に製品の改善を行い、必要に応じて再度プロトタイプを製作し、テストと改善のサイクルを繰り返します。ソフトウェアを含む機能的なテストがある場合、テストは開発者行わずに第三者(出来ればテスト専門のリソース)が実施することが望ましいです。

  • 必要な認証の取得、他社の特許調査

必要な認証や、他社の特許調査・確認を行います。試作と並行して調査が出来る項目なので、リソースに余裕がある場合は並行して実施しておいた方が良いでしょう。特に法律で必要な電波認証、安全規格などは注意して調査が必要になります。認証の取得にはある程度時間がかかりますので、試作品で実施してしまうことが最短の方法になります。

特許については別のコラムでも記載しましたが、競合製品の特許の有無を含めて調査と確認をしていきましょう。

  • 開発以外の製品化の準備

開発だけではなく、製造やマーコム、保証体制の準備を行う必要があります。製造では、量産工場へのテクニカルトランスファや製造図面の準備・見積作業、マーケティングコミュニケーションではHPへの掲載や売り込み方の検討の実施、保証体制はマニュアルの準備や保証書の準備などがそれに該当します。

量産へ移行はある程度の時間が必要になりますので、初回はパイロットランと言う形で、試作の延長で作ってしまうのも1つの案になりますが、単価が高くなることと品質担保が問題になりますので、どちらが良いかは検討した上で決める必要があるでしょう。

  • 製品化

テストと改善のサイクル、製品化の準備作業を経て量産を開始します。量産に移行する前に、製品の製造コスト、供給チェーンの管理、製造プロセスの最適化などを考慮する必要があります。また、製品の品質を確保するための検査や品質管理プロセスを設けることも重要です。ここは製造を委託する場合は、製造委託先に任せてしまえばスムーズに進みますが、定期的なレビューは必要になります。

  • 販売とサポート

製品の製造が始まったら、販売とサポートの計画を立てます。マーケティング戦略、販売チャンネルの選定、顧客サポートの体制など、製品を市場に投入するための準備をします。また、製品を使用する顧客からのフィードバックを受け取り、製品の改善や次の製品開発に活かすことも重要です。

 

以上のようなステップを踏んで、アイデアから試作品を作り上げ販売まで移行することができます。文字に起こすと簡単な流れですが、作る製品によってそれぞれの工程が細分化されますので、必要な期間もバラバラになります。開発が一番時間がかかるように思いますが、ギリギリで認証が必要なことが判明してそれが半年かかってしまったとか、製造工程の移行が部品調達の影響で1年後になってしまうなど、それぞれの工程で事前調査や役割分担が重要となるでしょう。また、これらの手順はあくまで一例です。具体的なプロジェクトによっては、異なる手順や追加のステップが必要になりますので、まずは全体を把握してから作業を進めていくことが必要になります。