コラム
2023年10月10日

部品入手難とその対策:サステナブルな製造への挑戦

近年、技術の急速な進化と市場の変動により、過去に開発された製品の部品供給や部品収束のための作り直し、製品改版が多くなってきています。特に産業用として10年以上の製品供給を求められている製品にとっては大きな問題です。私のところにも製品改版のご相談をいただくことが多く、せっかくなので記事にしようと思いました。

電子部品の供給状況の不安定さや、新たな規制への対応が製品の持続的な製造を困難にしています。

数年来続く部品供給難があり、それに加えて各メーカーから部品収束の案内が来ています。簡単に代替出来るものであれば良いですが、そうでは無い部品も多く、製品自体の改版せざるを得ない現状があります。それ以外の大きな動きとしては、ヨーロッパでのRoHS指令が挙げられます。RoHSとは、電気・電子機器中の特定有害物質の使用制限を意味し、これにより特定の有害物質の使用が制限されています。この指令に準ずる国内企業も大手をはじめ多くなっており、それに対応していない古い部品は、多くの製品での使用が難しく、部品の置き換えが不可避となっています。また対象物質も増えてきています。新規設計は基本的にRoHS対応にするのが一般的な常識ですが、10年またはそれより以前に設計された製品では、急に購入先からRoHS対応を指示されることで、大きな変更が必要になってしまいます。

このような課題と向き合う中、特に産業用の製品を取り扱う企業は大きな影響を受けています。産業用製品を開発する企業は、一般的に製品開発時に7年から10年の供給が確保される部品を選択し、それを基盤として製品を構築してきています。しかし、現在の部品の供給状況やその他の外部要因により、製品の改版や部品の更新が迫られています。

これに対する対策として、企業はキーとなる部品を数年分前もって在庫すると言うケースがあります。正しく簡単なやり方ではありますが、余剰在庫が残るリスクがあります。

その他としては市場流通品を採用するケースもありますが、部品の偽物や品質の問題に対応をする必要があります。そのため、X線検査などの技術を活用して部品の真正性を確認する取り組みも進められています。さらに、緊急の部品調達サービスを提供する企業も多くなっており、それらの活用も進んでいます。

 しかし、これだけで問題が解決されるわけではありません。産業用製品の製造期間は非常に長く、多くの部品や技術が絡み合っています。そのため、一つ一つの部品や技術の変更が製品全体の品質や性能に影響を及ぼす可能性があります。部品の供給問題やRoHSへの対応だけでなく、安全性規格やその他の規制への適合も確認する必要があります。

 さらに、国際的な政治状況や経済の動向も無視できません。中国台湾の政治的状況は、半導体産業を中心に多くの企業に影響を及ぼす可能性があります。これらの要因を考慮し、製品の長期的な供給を確保するための戦略を立てることが、産業用製品の継続的な製造の鍵となるでしょう。

 

 最後に、過去の製品の改版やバージョンアップが不可避となった場合も、現在の状況や未来の予測を基に、最適な製品を提供するための努力が求められます。これからの産業界の挑戦は、技術の進化だけでなく、さまざまな外部要因との向き合い方にもかかってくると言えるでしょう。